1、真田丸

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1、真田丸

 続きはある。常に続きはある。  十六世紀の東アジアの海を見た私は、これで死んでもいいと思ったのだが、おかげさまで今も生きている。   人生には常に続きがあるのだ。私が死んだとしても、誰かが私の意思を引き継ぐ。  歴史はそうして創られてきたのだ。  タイムマシンで一六〇〇年の上海に行き、平戸行の商船に乗った。私と陳博士と李博士はそのまま現代に帰ったのだが、戸部典子だけは人民解放軍広報部の諸君の要請により上海に戻った。碧海作戦の広報用VTRを作るのだそうだ。  広報というなら私や陳博士がやってしかるべきなのだが、戸部典子は中国人民にも日本国民にも人気があったので、今回の抜擢となったようだ。  どこまでも僭越な奴だ。  「戸部さんは親しみの持てるお顔をしていらっしゃいますから。」  と、人民解放軍広報部のプロデュサーが流暢な日本語で私に言った。  「親しみの持てる顔」というのは絶妙の表現である。この頃、戸部典子をカワイイなどという美意識のおかしな輩やからがいたが、これくらいがちょうどいいのだ。
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