83人が本棚に入れています
本棚に追加
冬馬と2人きりになった屋敷は
昼前だというのに真夜中のようにしんとしていた。
「庭に出よう」
「やることがあるんじゃ……?」
「バカだな。これがやることさ」
「へ?」
「いいから。来いって」
食器を片づけると待ってましたとばかり
冬馬は僕を庭に連れ出した。
庭先は殊更静かだ。
手を入れられていない分
自然のまま伸び放題の草や木が
あちこちに長い影を作り夏の日差しを遮る。
「ほら、見てごらん――あそこ」
世界から隔離された場所。
時間の流れを止めた場所。
「本当だ」
僕らのほかに動くものと言えば
庭に放たれた孔雀だけ――。
最初のコメントを投稿しよう!