第3章

25/28
前へ
/28ページ
次へ
冬馬と2人きりになった屋敷は 昼前だというのに真夜中のようにしんとしていた。 「庭に出よう」 「やることがあるんじゃ……?」 「バカだな。これがやることさ」 「へ?」 「いいから。来いって」 食器を片づけると待ってましたとばかり 冬馬は僕を庭に連れ出した。 庭先は殊更静かだ。 手を入れられていない分 自然のまま伸び放題の草や木が あちこちに長い影を作り夏の日差しを遮る。 「ほら、見てごらん――あそこ」 世界から隔離された場所。 時間の流れを止めた場所。 「本当だ」 僕らのほかに動くものと言えば 庭に放たれた孔雀だけ――。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

83人が本棚に入れています
本棚に追加