第3章

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挟み込まれ逃げ場はない。 身動きの取れない沈黙。 伏し目がちの僕の視線だけ 不自然に左右に揺れる。 「顔を洗ってきます……」 「そのままでいいさ」 「でも……」 一刻も早く逃げ出したくて言ってるのに。 「十分綺麗だ」 冬馬は有無を言わせず首を横に振る。 「いや、そんな……」 僕の片えくぼがへこむ度 2人は申し合わせたように柔らかく 僕の肩に髪に指先に触れた。 「お腹すいた?」 「……はい」 反応を確かめ楽しむように 緊張した子供をあやすように優しく 「それじゃ何でも食べないと」 「ン……」 それでいて強引に――。
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