第3章

2/28
前へ
/28ページ
次へ
「そう……サークルの合宿。急に空きが出たんだって昨日友達に誘われてさ……」 僕が家に電話を入れたのは 翌朝早くのことだった。 「大丈夫、危ない事なんてしないから。うん、平気……いや、まだ当分帰んないかな。帰る日が決まったらまた連絡するから心配しないで……じゃあ」 まだぼんやりする頭で嘘を吐くのは 長男が失踪して間もない母親にこれ以上心配をかけない為で。 「嘘を吐くのが上手いんだな――」 決してそんなんじゃない。 「由莉さん……」 「おはよ」 見れば起き抜けの由莉が 着物のような薄手のガウンをサラリと羽織り ドアにもたれて立っていた。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

83人が本棚に入れています
本棚に追加