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「冬馬さんは――全部読みましたか?」
パンを咀嚼する由莉の喉元を見つめながら
僕は切り出した。
「響也兄さんの日記」
「……ああ」
「由莉さんは2、3ページで挫折したって」
僕が言うと由莉は鼻で笑って
「この人は読んださ」
当然のように言ってのけた。
「え?」
「おまえ知らないのか――」
由莉の声は多少非難がましく
「朝吹冬馬っていや――うちの文学部の最年少准教授。ドイツ文学研究の若きホープだぞ?」
「へ?」
僕をとがめるように肩をすくめた。
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