第3章

20/28
前へ
/28ページ
次へ
「冬馬さんは――全部読みましたか?」 パンを咀嚼する由莉の喉元を見つめながら 僕は切り出した。 「響也兄さんの日記」 「……ああ」 「由莉さんは2、3ページで挫折したって」 僕が言うと由莉は鼻で笑って 「この人は読んださ」 当然のように言ってのけた。 「え?」 「おまえ知らないのか――」 由莉の声は多少非難がましく 「朝吹冬馬っていや――うちの文学部の最年少准教授。ドイツ文学研究の若きホープだぞ?」 「へ?」 僕をとがめるように肩をすくめた。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

83人が本棚に入れています
本棚に追加