第3章

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僕が知りたいことだらけなのは分かってて。 冬馬は講義さながら試すように尋ねる。 緊張でろくろく味のしない朝食。 「僕が知りたいのは……」 本題に入るべきだろうか。 しかし僕が聞きたいのは 知り合ったばかりの人間に向かって なかなか口に出せる事じゃなかった。 「いいです。やっぱり自分で読み進めます」 「本当に?」 作り笑いの片えくぼがまたへこむ。 ばれないように僕はそっと頬に手をやった。 と――。 「由莉――この後ちょっと頼まれてくれないか」 「あ?」 僕に視線を定めたまま冬馬が抑揚のない声で言った。 「学部長に書類を届けて欲しいんだ。僕は家でやることがあるから」
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