第3章

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行かないで欲しい――。 僕の心の声は届くことなく 「クソったれ……!」 由莉は我儘な兄を睨みつけ ナプキンを投げると席を立った。 「由莉さんっ……」 彼の足に 泣いて『行かないで』とすがっても良かった。 だけど僕は去って行く由莉の背中を ただ見つめ続けるだけで精一杯だった。 「こいつと2人きりで置いてかれるなんてごめんだ――って顔してるね?」 「そんな」 冬馬は見抜いていた。 見抜いていてなお 「食事がすんだら孔雀を見に行こう」  悪びれずに言った。 「それから少し話そう」
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