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行かないで欲しい――。
僕の心の声は届くことなく
「クソったれ……!」
由莉は我儘な兄を睨みつけ
ナプキンを投げると席を立った。
「由莉さんっ……」
彼の足に
泣いて『行かないで』とすがっても良かった。
だけど僕は去って行く由莉の背中を
ただ見つめ続けるだけで精一杯だった。
「こいつと2人きりで置いてかれるなんてごめんだ――って顔してるね?」
「そんな」
冬馬は見抜いていた。
見抜いていてなお
「食事がすんだら孔雀を見に行こう」
悪びれずに言った。
「それから少し話そう」
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