第3章

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「あっちにもいるだろ?ほら、夏水仙の後ろに」 僕の肩を抱いて長身を屈め 冬馬は桃色の愛らしい花の向こうを覗く。 「見えるか?」 「ええ、見えます――」 キラキラと輝く細長い孔雀の首は 夏水仙の桃色に交るとまるで花の茎のように見える。 「凄く綺麗」 美術品から抜け出したような光景に見とれ ついつい気を抜いた。 満面の笑みで振り向けば 「君の顔を見てる方が楽しい」 吐息のかかるほどの至近距離で冬馬がそう言って微笑んだ。 「っ……!」 僕は思わず目を逸らし 不自然極まりないスピードで再び孔雀に視線を戻した。
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