第3章

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「なっ……?」 僕の肩を抱く手にぐっと力が籠められた。 バランスを失った僕の身体は反転し。 「いやっ……!」 物の見事 庭の真ん中に押し倒されてしまう。 「何するんですかっ……!」 背中から伝わる ひんやりと湿った土の感触。 「放して下さいっ……!」 がっちりと抑え込まれる両手に 僕の声は酷く震えた。 孔雀たちは女みたいな僕の悲鳴か あるいは突然の主の蛮行に驚いて 長い尾を引きずりながらみな茂みに消えて行く。 「何するって?」 冬馬は僕の頬を打った時と同じ 我を忘れた傲慢な瞳をして 「食らうのさ――僕も悪食だ」 僕の耳元に低く囁いた。
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