第3章

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僕は無言で首を横に振る。 響也は自分の胸の内を表に出す人間じゃなかった。 いつも控え目でニコニコして。 怒りをあらわにすることも 誰かを批判することも滅多になかった。 昔から口数は多くなかったけれど 美しい外見そのままの 純粋で穏やかな性格はみんなに慕われ愛された。 『長男は大人しくて天使みたいにいい子――次男はまあ、末っ子そのものよ』 物心ついた時から それが母の口癖だった。 だから――。 響也の中に こんなにも埋もれていた言葉があったなんて。 「知らなかったし……驚きました」
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