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誕生日
「ほら、はーちゃんもっと食べて。おかわりあるからね」
20歳の記念だからと、お母さんは張り切って料理を作ってくれた。食卓には私と美月の好物ばかり並ぶ。唐揚げ、ハンバーグ、シチュー、餃子、揚げ出し豆腐、出前のお寿司。節操がないようにも思えるけど、今日は特別だもんね、とお母さんは笑う。隣を見ると、美月が幸せそうに唐揚げをほおばっている。
「しあわせ~」
目を閉じて口角をあげて、足をばたばたさせてはしゃぐ姿は、とてもハタチには見えない。私からすればわざとらしくてあざとい仕草にしか思えないが、周りの人間はいつもそんな美月を可愛いと言う。美月は、自分を可愛く見せるすべを知っている。自分でも分かっていて、実践する。実際それは成功していて、美月はどんなコミュニティでも人気者だ。愛嬌があって、接しやすくて、可愛い。見た目は同じだけど、私とは全然違う。
「ケーキもあるからね。すぐ食べる?」
「うん」
お母さんは終始ご機嫌だ。娘達が成人したのが嬉しくて仕方ないらしく、生まれた時や、小さい頃のこと、小中高でのこと、それから大学に合格した時のことを、終始笑顔で語っていた。
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