誕生日

3/7
前へ
/11ページ
次へ
誕生日が日曜日だったから、次の日大学に行くと、何人かの友達が祝福してくれた。 「葉月、誕生日おめでとう!」 最初に言ってくれたのは池谷香南子だった。香南子は、大学に入ってからの友達で、同じ文学部だ。サークルも同じものに所属している。趣味も話も合う、大事な友達だ。 「ありがとう、香南子」 「はいこれ、プレゼント」 「えっそんな、いいのに」 「何言ってんの。私の誕生日の時、くれたでしょ。もらってよ」 「そっか。じゃあ。ありがとうね」 雑談しながら、講義のある教室に入った。百何人かは入る大教室だが、私達の付く席はいつも決まっている。中庭側の真ん中の列、いちばん通路側。 鐘が鳴り、教授が教室に入り、壇上に上がった。前回の講義の軽いまとめと、今日扱う内容の概要を説明し始める。私はノートに、香南子はパソコンで教授の話を書き取っていた。教室は静かだが、ずっと後ろの席では、集団がお喋りする声が聞こえる。 授業が始まって5分ほどした時、真後ろの席に誰かが付く気配がした。振り返ると、同じサークルの広川翔平だった。 「あ、広川。遅刻じゃん。どうしたの」     
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加