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誕生日が日曜日だったから、次の日大学に行くと、何人かの友達が祝福してくれた。
「葉月、誕生日おめでとう!」
最初に言ってくれたのは池谷香南子だった。香南子は、大学に入ってからの友達で、同じ文学部だ。サークルも同じものに所属している。趣味も話も合う、大事な友達だ。
「ありがとう、香南子」
「はいこれ、プレゼント」
「えっそんな、いいのに」
「何言ってんの。私の誕生日の時、くれたでしょ。もらってよ」
「そっか。じゃあ。ありがとうね」
雑談しながら、講義のある教室に入った。百何人かは入る大教室だが、私達の付く席はいつも決まっている。中庭側の真ん中の列、いちばん通路側。
鐘が鳴り、教授が教室に入り、壇上に上がった。前回の講義の軽いまとめと、今日扱う内容の概要を説明し始める。私はノートに、香南子はパソコンで教授の話を書き取っていた。教室は静かだが、ずっと後ろの席では、集団がお喋りする声が聞こえる。
授業が始まって5分ほどした時、真後ろの席に誰かが付く気配がした。振り返ると、同じサークルの広川翔平だった。
「あ、広川。遅刻じゃん。どうしたの」
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