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香南子が言う。広川は急いで来たらしく、首には汗の粒が見えた。肩で息をするのを抑えて、鼻の穴が膨らんでいる。慌てて来たことを悟られたくないのかもしれない。なんだか微笑ましい。
「おう。ちょっと遅延で」
「遅延?広川、チャリ通でしょ」
「起きるの遅延した」
「ふ」
思わず笑ってしまった。広川がこちらを見る。
「何笑ってんの工藤。おはよ」
「おはよう。遅延証明書は?」
「あっやべえ。貰ってくれば良かった、オカーチャンに」
バッカだなぁと香南子が言う。
私達3人は同じテニスサークルに所属している。私と香南子は高校は別だが、それぞれテニス部に所属していた。広川は高校ではバスケ部だったらしいが、大学ではサークルで色々なスポーツをやりたかったらしく、バスケ、テニス、フットサルのサークルを掛け持ちしている。
再び講義に向き直ろうとしたところで、広川を肩をつつかれた。
「工藤あとでノート見して」
「いいけど、香南子がパソコンで打ってるから、そっちの方が見やすいよ」
「工藤、字キレイじゃん。あと池谷はケチだもん」
「誰がケチ?もう絶対見せないから」
香南子が毒づく。
「ホラな」
そう言って広川がにやりと笑う。広川の笑顔はいつも楽しい気持ちになる。私もにやりと笑った。
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