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足音が近付いてきて、香南子が席に付く。手にはカフェオレ。
「そこにさぁ、すごいイケメンの人がいた。声かけようか迷ったもん」
今来た方向を指差しながら、香南子が言った。どれ?と広川と2人で探そうとしたが、人混みで見当たらなかった。広川は、まぁ俺の方がイケメンだけどな、とか冗談を言って、香南子は声を掛けなかったことを帰るまで後悔していた。
大学から帰宅して夜、自分の部屋でくつろいでいると、スマホの通知が鳴った。広川からのメールだった。
"日曜、行きたいところある?"
広川と2人で出掛ける。そう考えると、つい顔がほころんでしまう。自分は少なからず、広川に好感を抱いているのだと実感した。
広川の誘い方も、好感が持てるものだったと思う。よく、「明日空いてる?」とか言って、先にこちらの予定を確認して、逃げられないようにしてから用件を伝える人がいるが、私はそのやり方があまり好きではない。用件が何なのか分からないままでは怖くて「空いてる」と言いづらいし、後に言われた用件が断りづらい。広川は先に2人で出かけたいと言ってくれたから、魂胆が分かって安心できた。そういう根っこの良さが、広川のいいところだと思う。
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