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「お前の方こそ言いがかりだろう。俺が浮気していたなんて証拠があるのか?」
「語るに落ちるって言うんだそういうのを」
僕は立ち上がり沙織が使っていた机の一番上の引き出しを開ける。中にはもう何も入っていない。
「小学生の頃、宝物を隠す秘密の場所っていうのが流行ってね。引き出しの二重底っていうのも流行ったんだよ」
言って、僕は引き出しの奥に手を伸ばし底板の端を指で引っ掻ける。上に引っ張るとそれほど抵抗なく底板が外れる。晴彦が目を見開いていた。引き出しの中から携帯を取り出す。
「これ、見覚えあるだろ? 前に沙織が使っていた携帯だよ」
携帯の電源を入れて写真保存アプリを立ち上げる。そこには晴彦と見知らぬ女がホテルに入っていく姿が写っていた。
「本当は黙っていようと思ったんだ。沙織は何も言わずに逝ってしまったから黙っていてほしいんだと思った。でも、お前は沙織を利用した。最後までお前の事を考えて黙っていた沙織を先に裏切ったのはお前だ」
晴彦が立ち上がって僕に飛び掛かってくる。体格では晴彦の方が僕よりも大きく力も強い。両腕を掴まれて床に倒れる。手の中から携帯が零れ落ちた。晴彦がすかさず肘を落とすと携帯がビキリと音を立てて割れた。
「詰めが甘いよ。高野」
「……甘いのはお前だよ。晴彦。僕はこの携帯を見つけたのは実は昨日なんだ」
僕は自分の携帯を晴彦に見せつけるようにして友人グループのSNSに晴彦の浮気写真を送信する。
晴彦の顔が蒼白に染まった。
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