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万引きをしたやつらってのは大抵シラをきるか平謝りか、タチの悪いので開き直って逆ギレと決まっている。女はそのどれとも様子が違っていた。
まるで万引きが悪いことと今知ったとでもいわんばかりだ。
「ウチとしては警察を呼ばなきゃいけないんです。いいですか?」
「はぁ、でも、警察は困ります」
「困ると言われてもねぇ」
「だって、あそこに連れていかれると迎えに来る人が必要だと聞きました。私、だれも迎えに来てくれる人がおりません。帰れなくなってしまいます」
しょんぼりとしたを向く女の顔はあどけない。
世間知らずなお嬢様か何かだろうか。迎えに来る人間はいないということは、一人暮らしなのだろう。うまくすればこの後……っていう展開も期待できるかもしれない。
俺は時計に目をやった。あと一時間もすれば勤務も終わる。
「とりあえず、名前を聞いていいかな」
「タハラサトミと申します」
「そう。サトミさんね。ねぇ、このあと時間ある?」
ダメもとのナンパをやってみたのは、ちょっとしたスケベ心と好奇心、それに暇を持て余した遊びってやつだ。
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