39人が本棚に入れています
本棚に追加
春の終わり頃。
「あぁ…あぢぃ……」
暑くなってきたある日のこと。
一人の男子生徒が、その暑さに愚痴を溢しつつ、そこまで遠くもない学校へ向かって歩いていた。
額に汗を浮かばせ、ダルそうな顔をしている彼の名前は、生土 竜(いずち りゅう)という。
帰宅部で、成績は中の中。身長は175と少し高め。
茶髪の無造作ヘアと、一見イケメンだけどよく見ると普通…程度の顔が特徴の、どこにでもいるようなごく普通の男子である。
「くすっ、ユウくん、最近いつもそれ言ってるよね」
「咲か。いや、暑いもんは暑いんだよ...」
後ろから彼に追い付いた女子生徒が、竜に笑いながら話しかけた。
彼女は竜の幼馴染みで、名前は秋野 咲(あきの さき)という。
栗色の髪をサイドテールにしている、身長160cmほどの、笑顔がよく似合う女子だ。
竜のことを、竜(りゅう)から『り』をとって、『ユウくん』と呼ぶ。
竜と咲は、家が隣同士でお互い部活もないから、よくこうやって一緒に登校することが多い。
最初のコメントを投稿しよう!