プロローグ 嵐の前の静けさ・日常

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春の終わり頃。 「あぁ…あぢぃ……」 暑くなってきたある日のこと。 一人の男子生徒が、その暑さに愚痴を溢しつつ、そこまで遠くもない学校へ向かって歩いていた。 額に汗を浮かばせ、ダルそうな顔をしている彼の名前は、生土 竜(いずち りゅう)という。 帰宅部で、成績は中の中。身長は175と少し高め。 茶髪の無造作ヘアと、一見イケメンだけどよく見ると普通…程度の顔が特徴の、どこにでもいるようなごく普通の男子である。 「くすっ、ユウくん、最近いつもそれ言ってるよね」 「咲か。いや、暑いもんは暑いんだよ...」 後ろから彼に追い付いた女子生徒が、竜に笑いながら話しかけた。 彼女は竜の幼馴染みで、名前は秋野 咲(あきの さき)という。 栗色の髪をサイドテールにしている、身長160cmほどの、笑顔がよく似合う女子だ。 竜のことを、竜(りゅう)から『り』をとって、『ユウくん』と呼ぶ。 竜と咲は、家が隣同士でお互い部活もないから、よくこうやって一緒に登校することが多い。
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