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……何だ……あれ……?
俺は原付きを止めた。
田舎町の小さな商店街を、暑さを誤魔化す程度で走行していた。
梅雨開けから突入した7月の陽射しは、アスファルトをジリジリさせていた。
見慣れた風景の中に。
【それ】を見つけた。
地元の人間しか殆どいない小さな町…。
限界集落とは言わないが、過疎化は否めない町…。
若者は家業を継ぐか、都会に出ていく町…。
豊かな自然は綺麗だが。
ただそれだけ。
大きな観光地でもない。
それでも近年、バイパスが交通の便を良くしたので、多少は活気がある。
そんな俺も、地元の人間とは言い難いけど…。
幼少期から小学生までは、住んでいたが。
中学入学から、東京で暮らしているからだ。
今は、大学2年生。
夏休みにて、帰省中というか…。
年に数回は必ず訪れる。
ちょっと、家庭というか家系的に特殊な事情。
そんな俺は、変わらぬ世界を眺めていたのだが…。
今日は、違った。
明るい晴れ渡る空も。
うだる様な暑い空気も。
顔見知りの多い町並みも。
何も変わらないのだが…。
……【あれ】は…?
陽射しの加減で、眩しかったので目を細めて見た。
一時間に一本程度の、ローカルなバス停近くに佇む人影を。
人影…女の子だ。
ワンピースにスーツケースを持った、女の子。
明らかに、この土地の人間ではない印象だ。
何かを探す様に、周りを見回している様子だった。
余所者が珍しいのではない。
俺には、その光景が日常に当てはまらないモノに見えていたから。
考え様によっては、俺なら日常…とも言えるか?
とにかく、この町…。
この【世界】には、浮いた存在だったから。
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