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俺が凝視していると、気が付いた様でこちらを見た。だが、敢えて視線を逸らされた? 俺の存在を認知したはずなのに、無視をした? 明らかに意思…思考を持っているのが解った。 ただ、そこに存在しているだけではない。 周りを認識している。 だが、こちらに寄って来る訳でも…訴える視線を投げてもこない。 悪意も敵意も感じない。 それに。 俺の知ってる【それ】とは少し違う質感…? 【それ】…。 いわゆる、幽霊と呼ばれる魂達の事だ。 俺は、そういう事が解る人だから。 家の母親も、伯父も…だ。 家系的な体質らしい。 迷惑な話だが、仕方がなく19年をそんな環境で生きている。 だが。 俺は比較的マシな方だ。 そんなものを日常茶飯事に見ている訳ではないから。 基本的には、自分が視ようとしなければ視えない。 余程、相手が強烈なタイプなら別だけど。 日常生活をしていたら、そんなモノには意外に遭遇しないから。 なのに、【それ】を認識した。 なんの波動も霊気も感じないのに。 だけど。 【それ】は、やや透けて見えていた。 なのに、魂の質感とは違い非常に存在感がある…? 今までに遭遇した事がないタイプなのか…? 危険性は全く感じない。 【それ】は、俺にアクションをおこさない。 いつもなら、無視を当然するのだが。 不思議な違和感が好奇心を刺激した。 幽霊にしても、普通の人間だとしても。 俺には異色な存在だったからだ。 ちなみに、俺は普通の大学生。 間違っても、迷える魂を昇天させる高尚な気持ちなど持ち合わせてない。 基本的に、スルー。 関わりは持たない。 …はず、だったが。 近付いてみた。 ゆっくりと。 原付きを押しながら、道の反対側に向かった。
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