安芸くんは、壁ドンができない。

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(壁ドンの体勢って、本来はこういう……)  さっきの一件で悟ったつもりでいた自分を恥じた。  壁ドンの体勢の本来の用途を、やっと私は正しく理解したのだ。 「……嫌じゃないよ」  ごそりと手を動かして、安芸くんの腰あたりをぽんぽんと軽く叩く。 「安芸だから、……全然嫌じゃない」  ドキドキしながらそう告げると、「よかった」って、声をひそめた返事が来た。  安芸くんがほんのり笑った気配が、伝わってきた。  ――そんなこんなで。  壁ドンができない安芸くんの、生まれて初めての壁ドンは、  安芸くんらしい、世界一優しい壁ドンだったとさ。  めでたしめでたし、と私は心の中で結んで、少しだけ肩の力を抜いた。  了
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