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「きゃあああああああっ」
「すーてーきー!」
女子生徒の歓声に黄色みが増す。
男子生徒は「相変わらずだな」と言いたげに肩を竦める。
留学生のトムくんは「Cool」と口笛を吹き、安芸くんの冷たい一瞥をモロにくらった内気そうな女子生徒は、くらりとめまいを起こした。(急病ではなく過度のときめきのためです念のため)
王子さまはそれらを無視し、鞄を持ち直すと、ヘアワックスで固めて上げた前髪をさらっと撫でた。
そのしぐさも無駄にかっこいい。……相変わらず、きれいなおでこでいらっしゃる。
さて。
大事なことなのでもう一度。
宝来高校には王子さまがいる。
もちろん現代日本は王制じゃないし、この高校には人知を超えたテニス部も芸能科が併設されているわけでもないから、単なる通称でしかなく、率直に言えば『学校一の人気者』なんだけど。
校長先生の名前を知らない生徒も、校歌の歌詞を覚えていない生徒も、安芸くんの顔と名前は知っているし覚えている。
安芸くんはこの学校において、誰よりも有名な王子さまである――
『ドS男子』、なのだ。
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