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「だよな。あと俺たちがしてないのは、セックスぐらいだよな」
「!?」
一体何を言い出したんだ、と驚きで固まる。
大輔はにやりと笑ってアイスを齧り、先ほどと同じように直人の口へアイスをねじ込もうとする。
「だ、大輔っ!」
待って、と制止しようと腕を突っ張れば、キャップの鍔に小さな衝撃があった。どうやら直人が深く被っていたため、つばと大輔のおでこが当たったようだ。
「邪魔」
そう言うなり大輔はキャップを取り上げ、再び唇を寄せた。
あ、と思う間もなく唇を割られ、ねじ込まれたのは大輔の冷えた舌だった。アイスはとっくに大輔の胃袋に落ち、ソーダ味だけが口の中を這い回る。舌を絡め、上顎を舌先でくすぐられると、突っ張っていた腕に力が入らなくなり縋るように大輔のシャツを掴んだ。
ふわふわと溶けそうなほどの感触と気持ちよさに、満たされ、何も考えられなくなる。
次第に、直人も応えるように大輔の舌を追っていった。
「…直」
呼びかけられ、少しずつ靄がかかったような視界が晴れていく。
夢の中にいるような浮遊感も薄らいできて、目の前の唇を貪ったのだと漸く理解すると同時に、一瞬で身を焼き尽くしてしまいそうなほどの勢いで全身が赤く染まった。
大輔はいつになく優しい目で、そんな直人の唇を親指で拭う。
「あんまエロい顔すんな。人に見られるとマズイ」
その一言で直人は夢から完全に目覚め、言葉に言い表しがたい怒りが込み上げてきた。
一体どの口が言うのか。
「だから、誰のせいだよ!!!!」
体温が異常に高い気がするのは、夏の暑さのせいか、それとも深く交じり合い、熱に浮かされたせいなのか、はたまたその両方か。
最高気温は三十五度。
熱中症対策にはソーダ味の棒アイス。
太平洋高気圧は、これからも、ずっと、勢力を拡大し続ける。
おわり!
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