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「!?」
衝撃のあまり固まり、呼吸の仕方を忘れる。
口の中に押し込まれたアイスが溶け出してようやく我に返り、慌てて口を閉じて咀嚼した。すぐさま飲み込んでしまい、喉元が冷たさに悲鳴を上げそうになる。
心中では完全に悲鳴を上げているが、落ち着け、落ち着け、と心臓の早鐘を聞かないふりをした。そうしなければ何か言ってはならないことを言い出しそうだった。
「大輔…なに、考えてんだよ…」
目の前には、何を考えているのかよく分からない表情で、大輔がじっと直人を見つめている。
あの少し冷えた、大輔の唇が触れた、そう思うと抑えきれない熱が顔に集まった。
「顔赤いけど大丈夫か?」
「誰のせいだよ!」
「でも青くはなんねーのな」
大輔にそう言われ、ことの重大さに気が付く。
普通、男同士でキス紛いなことをすれば、気持ち悪がるかギャグだとでも思うものだ。それなのに恋する乙女のように顔を赤らめれば、不審に感じるだろう。
今更ながらに、大輔への気持ちがばれたのではないかと血の気が引く。
さっと青ざめた顔を見て、大輔はぷっと吹き出した。
「リトマス紙か」
そう言うと直人の頭をくしゃくしゃとかき混ぜた。
「そんなに深刻になるなよ」
「…え?」
「俺と直の関係で、ちょっと口が触れた程度なんだし気にすることねーよ」
「お、お前が言うな!」
どもりながらもすかさず突っ込めば、大輔はからからと笑う。それを見てつられて笑ったが、直人の気持ちに気付いていなくてほっとすればいいのか、気付いてもらえなくて悲しんでいいのか分からなかった。
もう何年もこの調子だ。
好きなのに伝えられない、好きだけど伝えたくない。
せめぎ合いの中で答えは出ることはなく、ただこの先も、変わらず大輔のことを好きでいるのだろうとぼんやり思った。
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