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鷹田とは大学のサークルで親しくなった。
掲示板のサークル勧誘のビラを見ていた鷹田に声をかけたのは真人だった。
「ここに入るの? 一年?」
にこやかに話しかける真人を、少し驚いた目で見つめ返した鷹田だったが、すぐに、アンタは? と訊き返してきた。
「オレは入るつもり。なんか楽しそうだし」
鷹田はしばし警戒心のない真人の笑顔を見ていたが、それからぼそっと、俺も入る、と返してくれた。
「オレ、花井真人。よろしくな」
早速、知己ができたことが嬉しくて手を差し出すと、真人より一回り大きな体格の鷹田は、少し戸惑った様子ながらも、ぎこちなく手を握り返してくれた。
無口だが落ち着いた鷹田の傍にいるとどこか安心して、居心地がよかった。
鷹田にしてみても、穏やかで優しい性格の真人といるのは気を張らずに済んだのか、他のメンバーといるときよりもリラックスした表情を見せてくれていた。
ともに幼い頃から片親であることも互いへの親近感を抱かせ、気付けば二人でいる時間がどんどん長くなっていった。
二年の冬休みにサークルのスキー合宿へ行ったとき、ゲレンデの中腹で転んで足を挫いた真人を、鷹田は背負って降りてくれた。
大きくて逞しい背中に身を預けると知らずに胸が熱くなった。それは父親を知らない真人にとって初めての大人の男の背中であり、温もりだったのだ。
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