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「なんだよ、アンタ。ちょっと飲もうって誘っただけじゃんよ、んな怖いカオすんなって」 「二度とこいつに触るな」  忌々しげに吐き棄てると、鷹田は真人を腕に抱いたまま部屋を出ようとする。 「チッ、男湯にそんな色っぽいのを独りで入らせるのが悪いんだろ。襲われても文句言えねぇんじゃねーの」  背中に投げつけられた言葉に鷹田が足を止める。 「鷹田ッ」  慌てて止めようとしたが、素早く振り向いた鷹田は男の胸ぐらを掴みあげていた。 「あ…、あんだよ、ほんとのコトだろーがッ」  繰り出されそうになった拳に真人が必死にしがみつき、なんとか押しとどめる。 「鷹田、もういい、もういいから、行こ!?」  な? と真人が身体全体で背中にしがみつくと、鷹田はひどく苛立たしげな仕草で拳を振り下ろした。  その時に見た男達の顔には明らかな怯えが走っており、鷹田の顔を見なくてもその怒りの深さが伝わってきた。  真人は暴れる心臓を懸命に宥めながら鷹田と共に部屋を出る。  廊下で向き合うと頭上で鋭い舌打ちが聞こえてビクッと身をすくめた。と、それまで無意識に強く掴んでいた帯をひったくられ、乱暴に腰に巻かれてしまう。  男たちの前でどんな姿を晒していたのかを知られてしまい、真人は強く恥じた。  ひどく重い沈黙が落ちる。 「……」 「あの…、お前、仕事は、」  動揺のあまりとんちんかんなことを言ってしまうと、またギロリと睨まれてすくみあがった。  鷹田はこれから風呂に向かう予定だったらしく、浴衣に着替えていたが、真人の腕を掴むと、風呂とは反対の方向へと歩き出した。 「た、鷹田、」  返事がないまま、強引な腕に引かれて部屋に戻ると、鷹田は無言で鍵をかけ、乱暴な仕草で真人を部屋の奥へと押し込んだ。
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