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「鷹田、あの…」 「どうして独りで行ったんだ。待てと言っただろ」 「あ…、ごめん」  鷹田がむっつりと黙り込む。 「あの…、ありがとう、助けて、くれて……」  真人が俯き、か細い声で言うと、鷹田から少しだけ険しい気配が消えた。  握り締められた大きな拳から、怒りを懸命に抑え込もうと努力してくれているのが判る。  切なくて、胸が痛くなった。  無口だけど、いつでもこんな風に自分のために腹を立ててくれる優しいひと。  さっきは本当に怖かったけれど、あんな風に怒ってくれて、凄く嬉しかった。  いつでも誠実で、思いやりがあって、一度だって傷つけられたことなんてなかった。人間としても、男としても、最高だと思う。  だからこそ、もうこれ以上、自分が縛り付けちゃいけない。自分はもう充分、幸せな夢を見させてもらった。短くとも、自分には過ぎるほどの喜びと安らぎをもらったと思う。  だからもう、それだけで満足すべきなのだ。  真人は一切の表情を消して、出来うる限りの平坦な声で告げた。  「でももう、そんな風に、オレのために怒ってくれなくていいんだ。オレには、そんな価値がないから」 「――なに?」 「オレ、好きな人ができたんだ。……その人は、お前と違ってゲイだから、色々難しく考える必要ないし、…正直、ラクなんだ」 「……」 「お前は、すごく優しくしてくれたけど、やっぱりどこか遠慮してなきゃならない。それがずっと辛かった。お前にも悪くて……、悩んでた時にその人に会って、話聞いてもらってるうちに惹かれていって。……だからもう、お前とは会えない。これきりで別れてほしい」 (これで終わりだ)  真人はぎゅっと目を閉じた。
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