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あまりにも自分勝手な言い草だ。きっと鷹田は怒り、心底呆れ果てて、すぐにでも部屋を出て行くだろう。
そして今後もしどこかで会っても、真人には目もくれないに違いない。
その想像だけで胸が潰れそうになる。だけどこの芝居だけは貫き通すつもりだった。
なのに――。
「ウソだな」
端的に告げられ、真人は思わず顔をあげた。
「……え、」
鷹田は腕を組んで、真人をまっすぐに見おろしている。
「それ、お前の癖だ」
「え?」
「ウソつくとき、そうやって無意識に、左手の親指を右手で握る」
指摘されて真人はハッと自分の手を見た。極度の緊張を抑え込むかのように、左手の親指を右手の拳で固く握りしめていた。
茫然と鷹田を見上げると、ふいに長い腕が伸びてきて強く抱きすくめられた。
「……愛想つかしたのか、俺に」
ドクン、と心臓が跳ねる。
「違ッ」
思わずすがるように鷹田を見上げてしまう。鷹田は苦しげに目をすがめると、
「じゃあ、どうして急にそんなこと言うんだ」
少し掠れた声で問いを重ねる。鷹田も緊張しているのだろうか。
(そんな、どうして)
判らない。判らないけれど、自分を抱き締める強い腕に、その温かさに、愛しさが溢れ出してしまう。
(離れたくなんかない。そんなの決まってる……!!)
だけど――。
真人が何も言えずに俯いていると、鷹田は焦れたように真人の腕を掴み、奥間へと引きずってゆく。
そこで軽く突き飛ばすように蒲団のうえに倒されて、真人は小さな悲鳴をあげた。
胸から倒れこんだせいで真人の浴衣の裾が大きく割れて、艶やかな太腿が晒されてしまう。
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