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4
開け放した窓から涼しい風が流れ込み、火照った肌を優しく癒してゆく。穏やかな波の音も幽かに聞こえた。
乱された蒲団の上で男の腕に抱かれながら、真人はぼんやりと情事後の気怠い身体を投げ出していた。
烈しく愛された身体がまだ小さく震えている。それでもひどく満たされていた。
浴衣のはだけた肩を優しく抱き寄せられて、うっとりと目を閉じる。硬い胸板に頬を寄せると、力強い確かな鼓動が聞こえて安堵の溜め息をついた。
「大丈夫か」
優しく髪に口づけを落としながら、鷹田が低く問いかける。真人が小さく頷くと、今度はこめかみに愛おしげなキスが落とされた。
そんな鷹田にしては珍しく甘い仕草に、真人の目許がほんのりと紅く染まる。
(さっきの言葉、どういう意味だろう……)
『お前に、別れたいって言われて、…平気でいられるワケじゃないんだぜ……!』
言葉通りに受け取っていいのだろうか。鷹田も真人を放しがたく思っていると、そう考えていいのだろうか。
怖いけれど期待してしまう。
「オレ…、そんなに嘘、ついてたかな?」
癖を見破られたことに、真人は少なからず驚いていた。
鷹田がそれほど注意深く、自分を見ていたということにも。
「……ウソ、というか、自分を押し殺してる時、って意味だ。心と正反対のことを言う時と言ってもいい」
理知的な声がつむじの辺りに響く。先ほどの激情は鳴りを潜め、いつもの穏やかで深い声色だった。
鷹田の言葉はいつも明快だ。頭が良いな、と鷹田と話すたびに真人は感じる。簡潔で公正で、けれど突き放した感じにはならない。
それは鷹田という人間そのものにも言えることだ。基本的に冷静で物事を俯瞰で見ることが出来る男だというのが真人を含め、彼に関わる人々の共通した評価だと思う。
けれど時々、その目に激情が透けて見えることがある。そんな目を向けられるたびに、真人はゾクリとして、震えとともに身の内から甘い悦びが沸き上がる。
そしてその熱に奪い尽されたいという強い希求がこみ上げるのだ。
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