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真人は渇いた唇を舐め、言葉を探した。
「……オレは、お前に初めて会った時から、多分、惹かれてた。一緒にいるのが嬉しくて、幸せで、すごく安心した。傍にいたかった。それだけで、ここまで来てしまったんだ」
それのどこが問題なんだ? という目で、鷹田は先を促す。
「でも、それはオレの我儘だってことも判ってた。お前は優しいから、オレを拒むことも出来ずに、もう、三年も」
「おい、なんだそれ、」
真人はスッと人差し指で鷹田の唇を封じた。
「初めはそれでも良かった。お前が傍にいてくれるなら。……でも、いつからかオレはそれ以上を望むようになってしまった。お前からも愛されたいって。ただ同情して、引きずられるようにオレの傍にいるお前に、過ぎた望みを抱いてしまったんだ」
「……お前、ずっとそんな風に思ってたのか」
鷹田は目を瞠り、思わずといった様子で身体を起こした。つられて真人も気怠い身体を起こしたが、鷹田の強い視線に捕らわれて、力なく目を伏せる。
「オレは確かに頼りなくて放っておけないかもしれないけど、そんなことでお前を縛っていいはずがないんだ。お前にはお前の、」
「ゆかりと会ったのか?」
鋭い問いに息を呑む。うかつに漏らした言葉に、鋭敏すぎる鷹田が気付かないはずがなかった。
「何を言われた」
険しい表情で両肩を掴まれる。
「違う、違うんだ、確かに、ゆかりさんには会ったけど、それは単にきっかけでしかなくて。心の中じゃいつも考えてた。お前は元々ストレートだし、男のオレよりもずっと似合いの人がいるはずだって。……オレとじゃ家庭も作れない。お前が子供好きなのも知ってるけど、オレはそういう幸せをあげられな‥」
焦れたように抱きすくめられて、いきなり唇を奪われた。
驚いて身を強張らせる真人に、男はなおも深いキスを仕掛けてくる。
まるで真人の言葉の全てを奪いたいみたいに。
「……んっ……ふ、ぁっ……ゃ……」
烈しく口腔内を犯され、吐息ごと奪われて、真人がくたりと力を抜くと、鷹田は腕の中に閉じ込めながら祈るように告げる。
「同情なんかじゃない。放っておけないって言ったのは、目を離したくないって意味だ。俺が、お前を見ていたいんだ。一番近くで」
(え――)
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