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清潔な藺草の香りが立つ部屋に案内され、海に向かって開かれた窓の傍に立つと、美しい夕映えが眼下に広がる穏やかな海原を金色に染めあげていた。一面が海で他には何もない。夜はきっと、満点の星が見られるだろう。
久しぶりに互いの休暇が重なって、どこか行きたい所はあるかと訊かれた真人は「星の宿」として有名なこの宿への投宿を希望した。
「……綺麗だな」
思わず溜め息まじりに呟くと、ああ、と低い相槌が打たれ、背中から長い腕が回された。そのまま柔らかく抱き締められて、コトリ、と心臓が甘く痛む。
「仕事、忙しかったんだろ。無理させたんじゃないかって、ちょっと心配だったんだ」
「いや、問題ない」
そっけない言葉とは裏腹に、こめかみに小さなキスが落とされた。
この寡黙な男、鷹田修司とは大学時代に知り合った。愛想のない男だったが何故か馬が合い、たいてい行動を共にしていた。そして同じ時間を過ごすうちにいつしか親密になり、卒業と同時に恋人になった。
いや、恋人と呼んでいいのか――。
鷹田は言葉の代わりに親しげな態度を示してはくれるが、友愛の行き過ぎたものと取れなくもない。それでもいいと関係を続けてきたのは真人の方だった。
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