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親同士が兄妹で、修司の母は早くに亡くなり、ゆかりの両親も離婚をしたため、二人は父と母の実家である祖母の家に中学を卒業するまでの間、身を寄せていたという。
年長の修司は進んで祖母の手伝いをし、まだ幼かった自分の弟やゆかりの妹の面倒もよく見たそうだ。
「自分のことはいつでも後回し。家計を助けるために高校に入るとすぐにアルバイトもしてたし、自分が行きたかった私立の大学も、留学を希望してた弟のために諦めたりもして」
初めて聞く事実に真人は目を瞠る。
「そんな彼がいつももどかしかった。けれど同時に憧れてもいました。強くて、優しい彼に。……ずっと好きだった。さっき元婚約者って言ったのは子供の頃の約束です。きっと修ちゃんはそんな約束憶えてないと思う。私も自分の気持ちを伝えるつもりなんてなかった。でも久しぶりに会ったとき、どうしても抑えることが出来なくなって、告白したんです。そしたらあなたのことを聞かされて……。修ちゃんが誰かのこと、綺麗なんて褒めるのを聞いたことがなかったから、正直驚いたし、悔しかった。それが、外見のことだけを言っているんじゃないって判ったから。本当に、その人を愛しているのなら、自分に勝ち目はないと思いました」
「……」
「でもその後あなたが男性だと知って、すごく混乱した。だって修ちゃんの今までの相手はみんな女の人だったし」
真人は深く俯いた。
鷹田にそういった過去があって当然だとは思ったし、実際、大学の頃も、鷹田に女性の影があったことも知っている。
だが実際にそのことを聞くと、胸にヒリつくような痛みを覚える。
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