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 浴場から出て脱衣所で身体を拭き、清潔な浴衣を肩に羽織りながら、真人は自分の手が微かに震えていることに気付いた。  これからのひとときを思い、そしてそのあとに告げるべき言葉を考えると、知らずに呼吸が浅くなる。  くらりと眩暈を感じて、脱衣カゴが置かれた棚に手をついた。 「アレ、おにーさん、大丈夫?」  思いがけず、すぐ背後で声をかけられ、驚いて振り向くと、浴衣をだらしなく羽織った若者たちが真人を囲むようにして立っていた。  大学生くらいだろうか。どこか好色そうな笑みを浮かべ、棚に乗せた腕で真人を逃がさないように囲い込む。 「大丈夫、です」  真人が目を伏せながら答えると、リーダー格らしき派手な顔立ちの男が面白そうに真人の顔を覗き込んだ。 「ほんとにだいじょーぶ? ねえ、なんか顔赤いよ?」  遊び慣れた風な仕草に、無意識に身構える。  はだけたままだった浴衣を無意識に胸元でかき合せると、男達が一瞬息を呑む気配がした。 「……ねえ、俺たちこれから宴会すんだけど、おにーさんもどう? 一緒に飲もーよ」  強引に腕を掴まれ、真人は小さく悲鳴をあげる。  間の悪いことに脱衣所にはほとんど人がおらず、奥で扇風機にあたりながら背を向けている老人がいるだけだった。 「あ、あの、オレ、部屋に帰らないと」  浴衣の帯を辛うじて掴んだが、それを巻くこともできずに出口へと連れて行かれる。 (どうしよう……)  浴衣の前をぎゅっと掴みながら、真人は助けを求めるように周りを見回した。  だが廊下に出ても若者同士のふざけあいと思われたのか、真人たちを見咎める者はいない。
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