変わらない味

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「ねぇ、ちょっと買い物付き合って」 「やだよ」  母の言葉に面倒だと思い即答した。 「でももうお米ないよ。お水も買わなきゃだから……荷物持ちで。ね?」 「カートあるし、車から降ろすのくらいならやるけど」 「……乗せるも手伝ってくれない? 好きなお菓子買っていいから」  その時、ある光景が目に浮かぶ。  小学生の頃、婆ちゃんの買い物に付いて行った時の事だ。 「いつもありがとね」 「いいよ!」 「お母さんにも優しくしてあげるんだよ」 「うん!」  付いて行くだけで、祖母はいつもスーパーから出ると買ったチョコレート菓子を僕にくれた。  お菓子目当てに付いて行った。そんな場面だった。 「――孫と買い物に来るのが生き甲斐だ、っていつも言っていたのにねぇ」  祖母が亡くなった時に聞いた言葉が頭をよぎる。  爺さんを早くに亡くし、息子夫婦は共働き。学校から帰るといつも家に居るのが当たり前だった婆ちゃん。  母も今や、早くに結婚して家を出た兄に子供が生まれて婆ちゃんになった。 「……わかった」 「あら。あんたもまだ子供ね」 「はいはい」 ――――そうして行ったスーパー。 「……が一点。……が一点」  アルバイトであろう他校の女子高生達が仕事をこなしている。 「じゃ、カート置いてくるわ」 「はいね」  レジ台にカゴを置き、カートを返しにいく。 「……ったく」  いつもの銘柄米が高かったらしく、水は他店舗で買う方が安かったらしくカートは不要になった。 「……以上で、……円になります」 「袋詰めしてるよ」 「あ、ありがと。お肉は袋に入れてね」 「分かってる」  レジに戻るとタイミングが良かった。カゴを袋詰めする場所へと運ぼうとカゴに手を伸ばす。 「あ、あのっ」  瞬間、レジの子に声を掛けられた。 「あ、息子だから大丈夫よ」  即座に母が弁明してくれる。 「あ、いえ、……あ、あの、チョコ玉、まだ好きなんだね」  そう言ったレジ担当の顔を見る。  見覚えのある顔。しかし、記憶よりもだいぶ大人びていた。 「……レナちゃん?」 「うん。久しぶり……だね」 「……知り合い?」 「あ、うん。篠原さんちのお孫さん」 「お義母さんのお友達の?」 「うん」  こうして再会した二人。  この日からゆっくりと仲を深めていく。
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