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♪♪♪……
私はパソコンの左側にある電話のディスプレイをちらりと見た。
井上 行人(携帯)
090××××××××
「事務所、板東です。
井上さん、お疲れ様です」
私は素っ気なくならない様に気を付けながら電話に出た。
ぶぶっ、と小さな笑う声が電話の向こうから聞こえた。
「井上です、お疲れ様です。
仕事終わりましたんでこれから帰ります。
……梢(こずえ)、電話の方が話し方優しくて嬉しいなぁー」
……一瞬カチン!と来たが、実際普段の私は彼に冷たいかもしれない。
「…お気を付けてどうぞー」
何と返すか悩んだけど、ここはスルーを選択。
私の斜め左向かいの席に座る、義兄に報告を入れる。
「井上さん、終了です」
「了解。
…あれ?井上?って…ユキだよね?
随分アッサリした会話だな」
義兄は首を傾げて隣に座る姉に同意を求めたが、姉は苦笑いを浮かべた。
「まぁ仕事中だし、梢だし?
素直になるのは難しいわね」
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