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白百合は美しい娘だった。その名の通り透き通った肌と、漆黒の長い黒髪。けれど他人を寄せ付けない雰囲気が彼女にはあった。
「芙蓉、」
静かな声で名前を呼ばれる。
焼けるような日差しの中、夏休みで誰もいない中学校のプールに足を浸して、私達は他愛もない話をしていた。
「芙蓉、私、湖の底が見てみたいわ」
「…え、」
「ロマンチックだと思わない、そこは誰の手も届かなくて、暗くて、光も届かない」
うっとりとその光景を脳内に描いている白百合の瞳は、艶やかに濡れていた。
その時、私はどうしようもない熱情に駆られた。
白百合を、誰の手の届かないところへ行かせてしまうくらいなら、私が彼女の全てを手に入れたい、と。
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