渾身の一作

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夏休みに入るまでに、デッサンを済ませる。 本気で描くため、掛け軸用の絹の布を購入し、美術室を使って形を整えた。 手前にシャンパンタワー、中央に土下座したウエディングドレスを着た花嫁、奥に真っ白なウエディングケーキという白い地獄絵図に四苦八苦している園田先輩。 「取材だかんね」と理由をつけてケーキを奢ってくれた。皆優しい。 美樹ちゃんとのアドレス交換も果たし、お互い名前で呼び合う仲になった。 引きこもり歴14年は伊達では無く、アニメやマンガの裏設定を次々と教えてもらう。 反対に勉強は小春の担当になった。 加持先輩だと頭が良すぎて、身内ということもありケンカになってしまうそうだ。 教科書は新品同然のものがあったので、国語は音読して読めない箇所は紙の辞書で調べる。 数学は夏休みまでに四則計算をマスターする。 英語はbe動詞と一般動詞の区別ができるようにすると指導した。 加持先輩が香料に興味を示した訳は、完璧に引きこもっていた頃、何とか意思の疎通ができるようにと扉の前で香水を振りまいた、という裏話も聞かせてもらった。 本当はサンマの焼ける匂いに釣られて出てきたのに、加持先輩は自分の作戦が成功したと今でも思い込んでいるらしい。 好きな人の内緒話って、不謹慎だけど面白い。
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