死んだ子の齢を数える

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妻は僕が近づくと,なにかに怯えるように部屋の隅に隠れることがあった。 娘がいなくなってからというもの,情緒不安定な毎日だったが自傷行為をしたり,僕に敵意を向けたりすることも多かった。 僕はそんな妻の世話をすることが,自らに与えられた罰だと思った。 娘がいなくなってからというもの,妻は別人になった。 いままで明朗で活発だった美しい妻の姿はなく,髪の毛は乱れ,白髪も増え,口臭がキツく,カサカサの肌に,ザラザラの手,爪は割れ,足の裏は真っ黒だった。 お風呂に入れてもすぐに汚れ,トイレも自分一人ではできず大人用のオムツを履かせていたが,すぐに肌が被れた。 すぐに泣きだし,一日中泣き続けることもしょっちゅうだった。 妻のご両親も娘の姿に耐えられず,何度も設備の整った施設に預けて欲しいと言ってきた。 だが,たとえ援助があったとしても,僕は妻を手放す気にはなれなかった。
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