死んだ子の齢を数える

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骨と皮だけになった妻の姿を見ながら,僕は楽しかったころのことを思い出していた。 初めて妻に会ったとき,僕は緊張してうまく話せなかった。 まるで雑誌にでている読者モデルのような女性が,僕のような普通の男を相手するとは思えなかった。 何度も友人を交えて遊んでいるうちに,お互いの距離が縮まっていくのがわかった。 勇気を出して交際を申し込んだとき,彼女はすぐに返事をくれた。 とても明るくて笑顔が素敵で,彼女と一緒にいるだけで僕は幸せだった。 料理は決して上手ではなかったけど,一生懸命料理をしてくれる姿が愛おしくてしょうがなかった。 一緒に旅行にも行った。 贅沢はできなかったが,頻繁に外食にも行った。 彼女といるだけで僕は本当に幸せだった。 目の前にいるミイラのような女性を見ながら,僕は昔の思い出に浸った。 そして妻と知らない男とのメッセージを思い出しながら,自分のなかにある底の見えない深い闇にゆっくりと飲み込まれていった。
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