死んだ子の齢を数える

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4年前の日常がいまはもうない。 六歳の誕生日を迎える前に,娘はいなくなってしまった。 嬉しそうに目の前でダンスをしてくれる愛らしい娘の姿は,もうどこにもいない。 娘が寝ていた小さなベッドが,僕にとってこの世に娘が存在していた形跡を感じることができる唯一のモノになってしまった。 妻は娘が消えた日からすっかり変り果て,化粧もしなければ,歯も磨かなくなった。 僕が妻の歯を磨き,髪をとかすのだが,ガリガリに痩せ細った腕で抵抗する妻をなだめるのが日課になった。歯を磨かれ,髪をとかされている間の妻は,一通り抵抗した後に泣き崩れていた。 ずっと部屋に引き籠り,娘の玩具を出しては片づけ,突然悲鳴をあげたかと思うと何時間も泣き続けた。 僕はそんな妻に声を掛けられず,妻が汚した床を黙って綺麗にし,家の中を掃除するくらいしかできなかった。 「女は弱し,されど母は強し」という言葉があるが,僕の妻は女としても母としても,そして人間としても娘を失ったときから機能しなくなってしまった。
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