死んだ子の齢を数える

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妻のご両親が時間を見付けては,ボロボロになった妻の様子を見にきてくれていた。 すっかり変り果てた娘の姿にお義母さんが泣いている姿を何度も見たが,僕にはなにもできなかった。 お義父さんは僕を気遣って,援助するので妻を入院させようと何度も提案してきた。 ただ,入院といっても施設に入れるには抵抗があり,また援助があっても金銭的にも余裕がなかったことと,妻の面倒をみるのが僕の役目だと思っていたのでお義父さんからの提案は毎回できるだけ丁寧にお断りした。 職場でも僕の家庭のことは知られているので,僕は残業をしないで済むようになっていたが,妻のご両親が来てくれている日は少しだけ残業することができた。 娘がいなくなってからというもの,僕の生活は一変したが妻の面倒をみるのが精一杯で娘がいなくなった寂しさを感じることが日に日に薄まっていった。 僕が娘のことを考えない時間が増えるのと反比例して,妻は二十四時間ずっと娘のことを考えていた。 カレンダーには娘が初めてなにをした日なのか,すべて書き込まれており,昨日は娘が初めて自分で靴下を履いた日であり,初めてニンジンを食べた日でもあった。そして今日は娘が初めて電話で「もしもし」と言った日だった。 妻は必死に娘のすべてをカレンダーに書き込み,ちょっとしたこともすべて残そうとしているようだった。
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