カラスの心ニワトリ知らず

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「お前コレが見えねぇのかよ。」 鴉が黒い筋をつつくと先程と同じようにガジャッと音が鳴った。成る程さっきの後はそれから鳴っていたのかと納得しつつ腰を上げると、次いでやってくるのは更なる疑問。 「なぁ鴉、昨日まで空にそんな筋は無かったんだ!それは何だ?」 「お前阿呆通り越して馬鹿だろ。......ケージに入れられてんだよ。お前。」 ケージ......?はて、今までそんな物に入れられた事は無かった筈だし、入れられる事に心当たりもない。 「何で入れられてるんだ?」 分からない事は鴉に聞く、出会った頃から変わらないそれを当たり前のように繰り返した筈なのに。いつものように面倒臭そうな溜息をついて答えてくれると思ったのに。 鴉は苦々し気に眉を寄せると小さく舌打ちをした。 「......だからニワトリの知り合いなんて要らなかったんだ。」 鴉はボソリと何かを呟くといきなり両腕を広げた。 それに疑問を抱くと同時にオレと同じ目線の辺りまで降りてくる。 ソレをオレも視線で追って、初めて黒い筋が360度全てにある事に気付いた。ケージって箱みたいになってんだな。 「おい、鶏!下がってろ!!」 急に鴉が声を張り上げた、かと思うとガジャガジャとケージを力任せに揺らす。 暫くそうして、何かカランと地面に杭のような物が落ちると、四角くくり抜いたようにいつもの景色......筋のなくなった鴉の姿が広がった。
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