今後に期待、だな

2/3
前へ
/30ページ
次へ
 俺の言ったこと聞いてましたよね、と講義しているとニヤニヤとやけに楽しそうな直人がやってきていた。 「よう、またやってんのか」  懲りねえな、と純也と卓巳を交互に見て笑う。その様子に、今それどころじゃないと純也の矛先は直人に向かった。そんな不満の声をよそに直人は卓巳の方を見据えて、しっかし、と口を開いた。 「こいつの前じゃあ強面のお前も形無しだな?」  目を見開いて固まる卓巳を他所に、クク、と笑いながら高級車の後部座席に向かう直人。優雅に隣を過ぎていった主人を振り返って背中に、直人様ッと声を投げた。ひら、と手を振った直人は車へ乗車してしまった。未だ車に乗らずやんや騒いでいる強面と同級生の様子を見ながら、直人は強面のことを考える。 (あいつもああいう顔すんだなあ)  そういう顔をさせるのはあの同級生という訳で。自分の前ということで畏まった堅い一面しか見られなかったのを思い出す。自分の知らなかった将来部下になる男の一面を見ることができたということで純也に礼を言いたい気持ちになった。 「後藤サンってばー!」 「ああッ純也、てめえ、しつけえぞ!」 「え!?名前呼んでくれた!っていうか覚えててくれたんだ?!」     
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加