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「本局の計算通りですね。あとは交信電波を待つだけ、と」
「ああ。反射鏡の角度調節しとけよ」
操縦席にどっかりと座った年上の船員は、星空を透かすようにして遠くを見つめた。これから、この星空のかなたから、海岸のパラボラアンテナに向かってくる交信電波を妨害するのが、未来から来た彼らの任務だった。船の屋根に取り付けられた反射鏡で、電波を跳ね返すのだ。技術の痕跡を残さないこの原始的なやり方は、伝説管理課からありがたがられていた。
「反射鏡、オッケーです。あとはもうちょっと近づかないと微調整できませんね」
若い船員も戻ってきて、操縦席に座る。返事がないことを不審に思って隣を見やると、年上の船員は、背もたれに身体を預けて夜空を見ていた。若い船員の視線に気づくと、ゆっくりとため息をつく。
「こんなことして、何になるんだろうな」
「何に、って、そんな、何言ってるんですか。星間戦争が避けられるんですよ? 未来調査課が、あの星と戦争になる未来を確認したんですよね? だから、交流のきっかけを断つ。オレたちの仕事で、何万の宇宙の命が救われるって」
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