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夜の公園は不気味だ。昼間は子供達の歓声で賑やかな場所が、しんと静まり返って、カサカサと揺れる葉音が、妙に耳について離れない。
日和はキョロキョロと辺りを見渡した。その額に滲む汗は、生暖かな夜風のせいか、冷や汗のせいか。
ひとりだったら決して来なかった。風太が一緒だから、まだ耐えられた。
「ひよさん、大丈夫?」
恋人になったばかりの長身の男が、顔を青ざめさせる日和を覗き込んだ。
「だ、大丈夫だ」
「・・・幽霊が出ても心配することはないよ。俺が守って上げるから」
「ひっ・・・ふ、不用意にそんなことを言うんじゃない」
震える手を伸ばし、風太の腕を掴む。
「で、出てきたらどうするんだ」
まるで秘め事を話すかのように囁く。
「可愛いなぁ、ひよさんは。今すぐにでも襲ってやりたいくらい」
「なっ・・・襲うのは僕だ」
それは譲れないとばかりに、首を振った。
「えーー今度は俺の番だし」
「ばんってなんだ、ばんって」
「そりゃ、順番の番だよ」
「僕は年長者だ。ずっと僕の番に決まってるだろ」
「おーぼーだね。年下の可愛い恋人に場を譲ってもバチは当たらないと思うよ」
風太の手が伸び、日和の腰を抱く。尻をさわさわと撫でる手を、日和がパチンと叩き落とした。
「止めろ。セクハラで訴えるぞ」
「恋人の尻を触ったらセクハラで訴えられるの?それはちょっとひどくない?」
「呆れたバカップルだな」
「風太の品位が下がる」
やいのやいのと言い争いをする二人の間に、声が割り込んだ。日和は目を瞬き声のする方を振り返る。
「よう、奏に・・・ヒロ?なんでお前までいる?」
「あんまりな言い草だな。一応、関わったし?見届けようと思ってな」
ニタリと笑う顔が日和を見る。日和は思わず腕を掴む手に力を入れ、顔を引きつらせながらもペコリと頭を下げた。
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