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その時、ひよさんと、聞き慣れた声が聞こえた気がした。日和はつんのめるように足を止め、背後を振り返った。 「・・・あ」 柱の影から、少し怒った顔をする風太が姿を現した。 「・・・・・・こ、はら?」 「遅過ぎ。いつまで待たせるのさ」 「ーー小原!」 「うん。小原風太だよ」 日和は泣き出しそうに顔を歪めながら、風太に走り寄る。腕を掴み本物かどうか確かめた。 「・・・本当に小原だ」 「俺の偽物なんて出回ってるの?」 「小原に追い付かなきゃって必死だったから、夢かもしれないと思った」 「あはは。ひよさん、可愛いことをさらっと言ってくれるよね。俺がそれにどれだけドキドキしてるか知らないでしょ」 「そ、それはこっちのセリフだ」 甘く中毒性のある風太の言葉に、自分がどれだけハマっているか、知らないからそんなことが言えるのだと、日和は目を吊り上げた。 「俺を追いかけてくれたんだよね。・・・それは何故?」 「・・・え?」 突然の話題の変更に、付いて行けず戸惑う。 「どうして追いかけようとしたか、俺には理由を知る権利があるよね?」 「あ・・・」 日和はこの場に風太が居た衝撃で忘れていた、追いかけた理由を思い出した。 「ひよさん?」 促され、自分より随分と背の高い男を見上げた。 逃げるなと、自分に言い聞かせながら。 「 ・・・あ、あんな最低なことをしておいて、今更だと思われるかもしれないけど、ぼ、ぼ、僕はーーーー」 緊張のせいか、喉が干上がったみたいにカラカラで、日和はゴクリと唾を飲み込んだ。 そんな日和を風太は急かすことなく、ただジッと見つめている。 日和は深呼吸を二度ほどして、気持ちを落ち着かせた。
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