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「ーー僕は小原風太が好きだ」
風太が僅かに瞳を揺らした。
「小原風太が、好きなんだ」
もう一度ゆっくりと繰り返した。途端に、フッと心が軽くなる。
告白しただけ。想いを伝えただけなのに、それがただ嬉しくて、踊りだしたくなるほど心が跳ねた。
「俺が好きなの?」
「う、うん」
日和はコクコクと頷き、窺うように風太を見た。嫌悪の表情は浮かべていない。
(このまま、欲深い想いを伝えてもいいだろうか)
「僕の・・・僕の、自分勝手な願いを口にしてもいいだろうか」
「・・・なに?」
「もしも・・・ほんの少しでも望みがあるなら、僕は小原に愛されるために頑張りたい。こんな願い、最低だと分かってる。でも、僕は小原を諦めたくない。どうすれば、愛して貰える?小原風太に愛される条件を教えて欲しい」
「・・・俺に愛されたいの?」
窺う視線に頷いた。
「・・・愛されたい」
風太は日和をしばらく見つめたあと、腕を掴んだ。
「こ、小原?」
「場所、移動しよう」
戸惑う日和を引きずるように歩き、駅方面へと向かう。通りにある自販機でお茶を二本買った。それを手に駅の裏手に回り、近くにある公園に入って行く。風太は辺りを見渡すと、木陰にあるベンチへと歩みを進めた。
生い茂る木々が、降り注ぐ日差しを遮り、何とはなく体感温度が下がったような気がした。
風太はベンチに腰掛けると、日和にも座るように促した。来る途中で買ったお茶を差し出され「ありがとう」と、受け取る。
目の前の遊具で遊ぶ、子供達の歓声が辺りに響いていた。
「こんな場所に連れて来てごめんね。本当はひよさん家に押しかけたかったんだけど、俺、このあと学校に戻らなきゃいけないから」
「大丈夫だ」
「ここなら周りが賑やかだから、話を聞かれる心配もないかなって思ったんだ。ーーあ、熱中症になったらダメだから、水分はちゃんと取ってね」
「わ、分かった」
優しい心遣いに胸が跳ね上がった。
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