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「ひよさんさ、さっき俺を好きだって、愛されたいって言ってたけど、それって本気?俺、奏と付き合ってるんでしょ?ひよさん、奏から俺を奪うの?」 変な言い方をすると思った。まるで確認するかのように訊ねる風太を訝しむ。 「この前は違うって否定してたよね。気持ちが変わったのはどうして?それだけ俺が好きだからなんて、曖昧な答えは受け付けないから、ちゃんとひよさんの心の中を見せて」 「僕の心の中・・・」 「そう、ひよさんを教えて?」 真剣な目で請われて日和は瞳を揺らした。顔を俯け、静かに息を吐き出した。 風太は、日和の心を知りたいと言う。自分でも制御不能な、混沌とした心の中を晒せと迫る。 自分を曝け出すのは勇気を伴う。疎まれるかもしれないと不安も過ぎる。 それでも風太が願うならと、日和は自分の心と向き合いながら、ポツポツと話し出した。 「僕は・・・僕はずっと、誰かに執着するのも、人との関わり合いも避けて生きて来たんだ。見た目はこんなだし、親にも薄気味悪い、何を考えてるか分からないと、良く言われていたよ。みんなが僕を嫌って疎んでいると思い込んで『どうせ僕なんて』って言って、世の中を斜めに見てずっと拗ねてたんだ。願っても手に入らないから欲しがらない。そうすれば、傷付くことも、惨めな思いもしなくてすむと思っていた。色んな言い訳をして、最初から諦めて手を伸ばすこともしなかった」 殻に閉じこもって恨み言ばかりを口にして生きて来た。自分がこんな目に合うのは世の中が悪いからだと、何もかもを見えない何かに押し付けて、自分を正当化していた。 「最初に、僕の殻にヒビを入れたのは小原だ。拒絶しても何しても、小原はへこたれず僕に向かって来てくれた。優しくされて嬉しかった。甘やかされるのが心地良くて、小原の傍は誰よりも居心地が良かった。でも、それがどんな気持ちを意味するのか、その時の僕には分からなかったんだ。・・・僕が、僕の気持ちに気付いたのは、奏くんに呼び出されて、釘を刺された時だったんだ」 風太に恋していると、気付くと同時に失恋した。僕らしいと笑おうとしたのに、出来なかった。 日和は、その時の胸の痛みを思い出し、左胸を抑えた。
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