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日和は顔を上げて風太を見た。愛おしげに細められる目に顔を赤らめる。
小原も僕を好き・・・?僕と同じ気持ちでいてくれている?
日和は風太の膝に縋り付くように手を付いた。身を乗り出し、風太を下から見上げた。
「ーーーーじゃ、じゃあ、僕と付き合うつもりはある?僕は小原と恋人になりたい」
緊張で声が掠れた。背中には暑いだけじゃない汗が流れる。ほんの数秒が、何十分にも感じられて日和は今にも気を失って倒れてしまいそうな、心地になった。
「うん。俺もひよさんの恋人になりたい」
甘やかな笑みが風太の顔一面に広がった。日和は詰めていた息を吐き出し「良かった」と小さく呟いた。
「あーーくそっ」
突然、声を荒げた風太に日和は肩を震わせ、窺うように目を向けた。
「俺、これから学校戻らなきゃいけないんだよな。しかも、テストあと3日も残ってるし」
頭をかきむしり、ブツブツと文句を呟く。
「・・・小原?」
「俺の学校、赤点を二教科取ると夏休みが丸々潰れるんだよね。俺、さっきテスト放り投げて来たから赤点確実。もう一教科も落とせないから終わるまで会えないけど・・・大丈夫?」
「ーー何が」
「だってやっと気持ちが通じ合って恋人同士になったのに、3日も会えないなんて、ひよさん寂しくて泣いちゃうでしょ?」
「泣かないし、3日くらい平気だ」
「えーーそこは、泣いて泣いて涙の洪水で溺れちゃうくらい言わないと」
「ば、バカだろ、お前」
日和は顔を引きつらせジリッと後ずさった。
「ひよさんが好きすぎて浮かれているだけだよ」
身の危険を感じた日和がベンチから立ち上がろうとするより先に、腕が体に巻き付く。
「ちょ、止めろ」
「やだ」
「やだじゃない。僕のイヤがることはしないんじゃなかったのかよ」
腕の中から抜け出そうと暴れる日和を簡単に押さえ込み「だってひよさん、俺に触られるのイヤじゃないでしょ?」と耳元で囁く。
「人目があるから恥ずかしがってるだけで、本当は嬉しいんでしょ?だから、止めない。だって、ひよさんは平気かもしれないけど、俺は寂しいもん。ひよさんが足りないから充電させてよ」
甘える声で強請られて、日和は暴れるのを止めた。さっきは平気だって強がったが、日和だって本当は寂しい。体の力を抜いて風太にもたれかかる。
遊具で遊んでいる子供達の歓声を聴きながら、日和は風太の匂いを吸い込み目を閉じた。
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