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大翔の励ましに一発奮起した。だから感謝はしているのだが、どうにもその目が揶揄っているようにしか見えない。
余り関わり合いになりたくないのが本音だ。
「ヒロ、ひよさんが脅えるからこっち見るな」
「お前、幼馴染に向かって言い過ぎだ」
「悪いな。こいつが付いてくるって聞かなくてな」
「ああ、奏は気にするな。どうせそんなところだろうと思った」
「お前らなぁ」
大翔が拗ねた口振りで目を眇める。
「奏、早速本題なんだが」
大翔を無視し、風太が奏に向き直る。途端に緩んだ空気がピシリと緊張を孕んだような気がした。
「俺、ここに居る橘日和さんと付き合うことになった。ずっと隠しててごめん。奏のストーカーしてた人だから、何だか言い辛かったんだ」
風太を真っ直ぐに見つめていた奏がフッと息を吐き出した。
「そうか。・・・お前がわざわざ俺を呼び出して報告するくらいなんだから、本気なんだな」
「ああ」
風太は隣でハラハラとしながら見ていた日和を見る。
「本気だ」
恋人の甘やかな視線に日和の顔が赤くなる。隠すように俯く日和に「橘さん」と、奏が声を掛けた。
日和は思わずピシッと背筋を伸ばし、奏に顔を向ける。
「は、はい!」
「この前は、意地の悪いことを言ってしまいました。申し訳ありません」
「い、いえ」
ブンブンと頭を振る。
「あの時、風太に聞かされていた話では『惚れた女がいる』でした。風太に優しくされたあなたが、勘違いをしてしまったらコトだと思い、わざと誤解させる口振りで釘を刺しました。今にして思えば余計な心配だったんですがね」
奏が苦笑をし、風太を軽く睨んだ。
「お前が妙な嘘を吐くからだからな」
「反省してる」
奏は日和に視線を移すと「風太を、よろしくお願いします」と、深々と頭を下げた。
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