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公園からの帰り道。日和は風太と手を繋ぎ、星空を眺めながら帰途に着いていた。 先ほどの奏からは、以前、突き刺さるほどに感じた風太への熱が一切感じられなかった。紳士然とした様子からは、無理をして誤魔化しているようにも見えなかった。 (あれは気のせいだったんだろうか) 「ひよさん」 クイと手を引かれて隣を歩く風太に目を向けた。 「何を考えてるの?」 問われて視線を逸らした。 「ひよさんが気にする必要はないからね」 全てを見透かした風太がニコリと笑う。 「でも・・・」 「ひよさんは、俺のことだけ考えてればいいの。じゃないとヤキモチ妬くよ?」 「・・・え?」 「俺、前にも言ったでしょ?かなり嫉妬深いから覚悟してね」 「なっ・・・」 風太は指を絡ませ、いわゆる恋人繋ぎをすると、日和の指先に唇を押し当てる。カァーと顔を真っ赤に染める日和を、目を細めて笑った。 その目の奥に獰猛な光が見えて、日和の全身がブワッと総毛立った。 「ひよさんが好き過ぎて、何するか分からないよ?」 試験も無事終わり、日和の休みに合わせての逢瀬は、告白したあの日から5日後。 今日は泊まるからと、風太には宣言されている。 日和は今回も襲う気満々だ。でも、無理かもしれないと、色香を撒き散らし始めた風太を見ながら、諦めの混じった溜め息をこっそりと吐き出した。
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